退職給付制度―退職給付会計―使用する勘定科目―退職給付引当金
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退職給付引当金とは
退職給付引当金の定義・意味など
退職給付引当金(たいしょくきゅうふひきあてきん)とは、将来、従業員が退職するときに支払う退職給付(退職一時金と企業年金※)のうち、当期に負担すべき金額を見積り、当期の費用として計上するための引当金を処理する負債勘定をいう。
※企業年金には、税制適格退職年金、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金がある。
退職給付引当金の目的・役割・意義・機能・作用など
適正な期間損益計算
退職金は従業員が勤務していた期間の労働力に対して支払われるため、この退職金を支払った会計期間に全額費用計上すると正しい期間損益計算ができない。
そこで、将来支払われる退職金のうち、当期に負担すべき金額を合理的に見積り、当期の費用として計上するために設定される引当金が退職給付引当金である。
参考: 『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、116項。
退職給付引当金の位置づけ・体系(上位概念等)
退職給付制度
退職給付制度は、次の2つの種類に分類される。
このうち、会社が確定給付型退職給付制度を採用している場合は、会社は従業員に対して法的債務を負っていることになるため、退職給付債務※を基礎として計算された退職給付引当金を計上することが必要となる。
退職給付債務とは、企業が将来の退職一時金と企業年金の支払いに備えて、現時点(当期末)で負担している総金額で、所定の計算方法で算定・算出される。
これに対して、会社が中小企業退職金共済制度※(従業員用)・小規模企業共済制度(代表者・役員用)などの確定拠出型退職給付制度を採用している場合は、退職給付引当金の計上は不要である。
掛金は退職給付費用勘定などを使用して費用として処理をし、法人税法上も掛金全額の損金算入が認められている。
国の制度である中小企業退職金共済制度のほか、商工会議所等が行なっている特定退職金共済制度もある。
引当金
引当金の代表例としては、貸倒引当金、退職給付引当金、修繕引当金がある。
企業会計原則では引当金の具体例としてこれらも含めて以下のようなものをあげている。
他の勘定科目との関係
退職給付費用
退職給付引当金を設定する場合は、退職給付引当金勘定を用いて負債計上するとともに退職給付費用(または退職給付引当金繰入)勘定を用いて費用計上する(後述)。
退職給付引当金と関係する概念
退職給付引当金と間違いやすい概念
退職給与引当金
所得税法上、退職給与引当金という概念があるが、これは、会計上の退職給付引当金とは異なる。
必要経費―引当金―退職給与引当金―概要・概略・全体像 - 税金―所得税法
退職給付引当金の歴史・沿革・由来・起源・経緯など
新会計基準(会計ビッグバン)
「退職給付に係る会計基準」の導入
税法基準に則ったかたちの退職給与引当金では退職一時金だけを貸借対照表上に計上することになる。
しかし、こうした会計処理では現時点での会社負担の総額が不明である。
また、すべての退職給付債務を企業の債務として処理をする国際的な会計基準と照らしても適切とはいえず、国際比較も困難となる。
そこで、新会計基準(会計ビッグバン)の一環として、退職給付については「退職給付に係る会計基準」という新しい国際会計基準が導入されることとなった。
新会計基準では、退職一時金と退職年金(企業年金)のどちらについてもこれを区別せず、企業が将来負担する可能性のある退職給付額のうち、期末までに発生している総金額を退職給付債務として貸借対照表に示すことになる。
そして、この退職給付債務のうち、当期に発生した部分を退職給付費用として示す。
また、この会計処理によれば、従業員が退職した年度に一時に退職金というかたちで費用が計上されることがなくなるため、損益計算書上も著しい影響を受けることがなくなる、といえる。
退職給付引当金の決算等における位置づけ等
退職給付引当金の財務諸表における区分表示と表示科目
区分表示
退職給付引当金は、従来の退職給与引当金と同様に、長期の負債性引当金として取り扱われるので、固定負債に属する。
企業会計原則
(二)負 債
…
B …。引当金のうち、退職給与引当金、特別修繕引当金のように、通常一年をこえて使用される見込みのものは、固定負債に属するものとする。
退職給付引当金の会計・簿記・経理上の取り扱い
退職給付引当金の計算方法
退職給付引当金は、退職給付債務に未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を控除した額を計上する。
すなわち、次の計算式で算定する。
退職給付引当金 = 退職給付債務 ± (未認識過去勤務債務 + 未認識数理計算上の差異)- 年金資産
退職給付債務
退職給付債務の計算方法については、次のページを参照。
年金資産
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
期末(決算時)
決算において、将来支払われる退職金のうち、当期の負担分を見積り計上するときは、決算整理事項のひとつとして、退職給付引当金の設定、すなわち、その見積額(繰入額)を退職給付費用(または退職給付引当金繰入)勘定(費用)の借方に記帳するとともに退職給付引当金勘定(負債)の貸方に記帳して負債計上する。
退職金を支払ったとき
実際に退職金を支払ったときは、その退職者に対して設定された退職給付引当金勘定を取り崩す。
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)
退職給付引当金の設定(決算整理事項)
決算にあたり、従業員に対して将来支払われる退職金のうち、当期の負担分を見積り計上した。
退職給付費用 | ✕✕✕✕ | 退職給付引当金 | ✕✕✕✕ |
退職金を支払ったとき
退職給付引当金 | ✕✕✕✕ | 普通預金 | ✕✕✕✕ |
退職給付引当金の税務・税法・税制上の取り扱い
退職給付引当金の損金算入(法人税法)の可否
したがって、退職給付引当金を会計上費用として計上したとしても、節税効果があるというわけではない。
ただし、所得税法で、一定の限度額の範囲内で必要経費に算入できる退職給与引当金という制度がある。
必要経費―引当金―退職給与引当金―概要・概略・全体像 - 税金―所得税法
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、退職給付引当金の設定は内部取引なので、不課税取引として消費税の課税対象外である。
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