長期借入金
長期借入金とは
長期借入金の定義・意味など
長期借入金(ちょうきかりいれきん)とは、決算日の翌日から起算して1年を超えて支払期限の到来する(つまり、「長期」の)、銀行などの金融機関、取引先(得意先・仕入先)、親会社・子会社などの関係会社、株主・役員・従業員など企業内部の者などからの借入金を処理するための負債勘定をいう。
法人・個人の別
法人・個人
長期借入金は法人・個人で使用する勘定科目である。
長期借入金の位置づけ・体系(上位概念等)
借入金
長期借入金は借入金のひとつである。
なお、借入金については後述するように1年基準(ワン・イヤー・ルール)が適用され、次のように分類して処理をされる。
長期借入金の範囲と具体例
長期借入金の範囲
短期借入金
短期・長期の区別は、決算日の翌日から1年以内に支払期限が到来するか否かで判定する(1年基準)。
したがって、当初は長期借入金であっても、時の経過により、決算日の翌日から1年以内に支払期限が到来するようになった場合は、原則として、短期借入金に計上して(長期借入金から短期借入金に振り替えて)流動負債の部に表示する。
ただし、単に貸借対照表上で科目名を1年以内返済長期借入金として独立して表示してもよい。
参考:中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、145項。
金融機関からの借入れ
実務上、銀行などの金融機関からの借入を長期借入金、その他の借入金を短期借入金として処理しているところも多い。
長期借入金の具体例
長期借入金として処理をする代表的な例としては、銀行から借入証書を作成して長期で借り入れる資金調達である。
他の勘定科目との関係
ただし、株主・役員・従業員など企業内部の者や親会社から借入をする場合もある。
この場合、本勘定のほか、次のような勘定科目を使用する場合がある。
株主・役員・従業員からの長期借入金
株主長期借入金・役員長期借入金・従業員長期借入金
株主、役員、従業員からの短期借入金等の金額が負債及び純資産の合計額の5/100を超える場合は、株主長期借入金・役員長期借入金・従業員長期借入金など、その負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第五十三条 第五十二条第一項第八号に掲げる項目に属する負債のうち、株主、役員若しくは従業員からの長期借入金又はその他の負債で、その金額が負債及び純資産の合計額の百分の五を超えるものについては、当該負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
親会社などからの借入金
親会社長期借入金
親会社などからの借入金は、親会社長期借入金などといった特別の科目を設けて区別して表示するか、あるいは、注記の方法によりその内容を明確に示す必要がある。
長期借入金の決算等における位置づけ等
長期借入金の財務諸表における区分表示と表示科目
区分表示
固定負債
長期借入金は1年基準(ワン・イヤー・ルール)により処理をされ、固定負債に属するものとして表示する。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 資産、負債及び資本の各科目は、一定の基準に従って明瞭に分類しなければならない。
…
(二)負 債
負債は流動負債に属する負債と固定負債に属する負債とに区別しなければならない。…
B 社債、長期借入金等の長期債務は、固定負債に属するものとする。
企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
…
貸付金、借入金、差入保証金、受入保証金、当該企業の主目的以外の取引によって発生した未収金、未払金等の債権及び債務で、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年をこえて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする。
財務諸表の注記
親会社からの短期借入金
先述したように、親会社などからの借入金は、親会社長期借入金などといった特別の科目を設けて区別して表示するか、あるいは、注記の方法によりその内容を明確に示す必要がある。
取締役・監査役・執行役からの短期借入金
取締役、監査役、執行役に対する金銭債務は、貸借対照表に、その総額を注記する。
会社計算規則
(貸借対照表等に関する注記)
第百三条 貸借対照表等に関する注記は、次に掲げる事項(連結注記表にあっては、第六号から第九号までに掲げる事項を除く。)とする。…
八 取締役、監査役及び執行役との間の取引による取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務があるときは、その総額
返済予定額の合計額
長期借入金であって、金利の負担を伴うものについては、返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記しなければならない。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(金融商品に関する注記)
第八条の六の二 …
6 社債、長期借入金、リース債務及びその他の負債であつて、金利の負担を伴うものについては、返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記しなければならない。
担保に供した資産の注記
金融機関から借入れをする場合は、不動産に対する抵当権設定など、何らかの担保を要求される。
こうした担保に供した資産がある場合には、注記によって開示しなければならない。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(担保資産の注記)
第四十三条 資産が担保に供されているときは、その旨を注記しなければならない。
長期借入金の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
借入れを行った場合
決算日の翌日から起算して1年を超えて支払期限の到来する長期の借入れを行ったときは、長期借入金勘定(負債)の貸方に記帳して負債計上する。
返済する場合
銀行などの金融機関からの長期借入金の返済方法には元金均等返済方式と元利均等返済方式があるが、いずれにせよ、元本と利息を分けて仕訳をする必要がある。
すなわち、長期借入金を返済したときは、その返済額を長期借入金勘定(負債)の借方に記帳してこれを減少させるとともに、支払った利息の額を支払利息勘定(費用)の借方に記帳して費用計上する。
長期借入金の管理
補助科目の作成等
法人の場合、法人税の確定申告時に勘定科目内訳明細書(借入金及び支払利子の内訳書)を作成しなければならないので、長期借入金はその借入先ごとに補助科目を作成して管理しておくと便利である。
テンプレート
長期借入金を管理するための返済計画書の書式・様式は、次のサイトのページなどにある。
長期借入金の事務
納税証明書の提出
銀行から借入れる際、税金の滞納などの調査のため、納税証明書の提出を求められる。
これは、税金の法定納期限が抵当権などの設定以前である場合の未納税額の回収が抵当権に優先するからである。
取引の具体例と仕訳の仕方
借入れを行った場合
設備投資のため、銀行から返済期間10年間で融資を受けた。その際、収入印紙代が差し引かれて入金された。
普通預金 | ✕✕✕✕ | 長期借入金 | ✕✕✕✕ |
租税公課 | ✕✕✕✕ |
借入金を利息とともに返済した場合
長期借入金の分割返済の期日に元金と利息が銀行口座から引き落とされた。
長期借入金 | ✕✕✕✕ | 普通預金 | ✕✕✕✕ |
支払利息 | ✕✕✕✕ |
長期借入金の支払期限が1年以内になった場合
長期借入金の支払期限が1年以内になった。
長期借入金 | ✕✕✕✕ | 短期借入金 | ✕✕✕✕ |
長期借入金の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、長期借入金は不課税取引として消費税の課税対象外である。
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