低価法(低価主義)
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低価法とは
低価法の定義・意味など
低価法(ていかほう)とは、期末棚卸資産の評価額の決定にあたり、原価法により評価した価額と期末時の時価とを比較し、いずれか低いほうの価額を期末棚卸資産の貸借対照表価額とする棚卸資産の評価基準をいう。
なお、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」では、積極的に「低価法」という用語は使用されていない(「結論の背景」で使用されている)。低価法を指す用語として「収益性の低下に基づく簿価切下げ」という表現が使用されている。
法人税法施行令
(棚卸資産の評価の方法)
第二十八条 法第二十九条第一項 (棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)の規定による当該事業年度終了の時において有する棚卸資産の評価額の計算上選定をすることができる同項 に規定する政令で定める評価の方法は、次に掲げる方法とする。
…
二 低価法(期末棚卸資産をその種類等(前号ヘに掲げる売価還元法により算出した取得価額による原価法により計算した価額を基礎とするものにあつては、種類等又は通常の差益の率。以下この号において同じ。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、前号に掲げる方法のうちいずれかの方法により算出した取得価額による原価法により評価した価額と当該事業年度終了の時における価額とのうちいずれか低い価額をもつてその評価額とする方法をいう。)
低価法の別名・別称・通称など
低価主義
日本経済新聞社 『会計用語辞典』 日本経済新聞出版社、1978年、130頁。
低価法の目的・役割・意義・機能・作用など
期末棚卸資産の時価がその取得原価(帳簿価額)よりも下がる場合、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、時価で期末棚卸資産を評価する低価法が強制適用される。
棚卸資産の評価に関する会計基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準
7. 通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。
保守主義の原則
低価法は、時価会計を積極的に導入しようとするものではなく※、いわば、保守主義の原則にもとづく会計処理である。
※後述のように、低価法は、含み益の認識はせずに含み損だけを認識する。
低価法の位置づけ・体系(上位概念等)
評価替え
棚卸資産の評価基準
会社の利益を計算して、損益計算書や貸借対照表を作成するには、売上原価等を確定しなければならない。
そして、そのためには、まず期末棚卸資産(期末商品棚卸高など)の評価を行う必要がある。
低価法と関係する概念
反対概念・対概念
原価法
原価法は、棚卸資産の評価方法として論じられると同時に、棚卸資産の評価基準としても論じられることがある。
低価法の方式
低価法には、次の2つの方式がある。
低価法の歴史・沿革・由来・起源・経緯など
平成21年3月前
原価法または低価法
従来、取得原価をもって棚卸資産の貸借対照表価額とし(原価法)、時価が取得原価よりも下落した場合には時価による方法を適用して算定すること(低価法)ができるものとされてきた(企業会計原則の貸借対照表原則五Aと注解10)。
このように、棚卸資産の貸借対照表価額に関しては、原価法と低価法の選択適用が認められていた。
ただし、原価法を適用している場合でも、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とする(強制評価減)ものとされてきた。
平成21年3月以降
低価法
平成21年3月以降は、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、低価法の強制適用により期末棚卸資産を評価することとなった。
なお、時価会計と似ているが、低価法は、含み益の認識はせずに含み損だけを認識するという点で、時価会計と異なる。
決算等における位置づけ等
財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 売上原価 > 商品評価損
表示方法
売上原価の内訳科目
「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、時価が取得原価を下回った場合の商品評価損は、損益計算書上、原則として、すべて売上原価の内訳科目として表示することとなった。
ただし、臨時的で、かつ、多額であるときは特別損失に属するものとして表示する。
棚卸資産の評価に関する会計基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産の収益性の低下に係る損益の表示
17. 通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額(前期に計上した簿価切下額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は売上原価とするが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する。また、収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。…
また、財務諸表等規則では、原価性を有しないと認められるものについては、営業外費用、または特別損失に属するものとして表示するとされている。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(原価差額の表示方法)
第九十六条 財務諸表提出会社の採用する原価計算方法に基づいて計上される原価差額は、一般に公正妥当と認められる原価計算の基準に従つて処理された結果に基づいて、売上原価又はたな卸資産の期末たな卸高に含めて記載しなければならない。ただし、原価性を有しないと認められるものについては、営業外収益若しくは営業外費用として、又は特別利益若しくは特別損失として記載するものとする。
従来は、企業会計原則により、時価が取得原価を下回った場合の商品評価損は、原則として、売上原価の内訳科目または営業外費用に属するものとして表示するものとされていた。
ただし、時価の下落が著しい場合等は、営業外費用または特別損失に属するものとして表示する。
企業会計原則注解
〔注10〕たな卸資産の評価損について
(1) 商品、製品、原材料等のたな卸資産に低価基準を適用する場合に生ずる評価損は、原則として、売上原価の内訳科目又は営業外費用として表示しなければならない。
(2) 時価が取得原価より著しく下落した場合(貸借対照表原則五のAの1項ただし書の場合)の評価損は、原則として、営業外費用又は特別損失として表示しなければならない。
(3) 品質低下、陳腐化等の原因によって生ずる評価損については、それが原価性を有しないものと認められる場合には、これを営業外費用又は特別損失として表示し、これらの評価損が原価性を有するものと認められる場合には、製造原価、売上原価の内訳科目又は販売費として表示しなければならない。
低価法に関する会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
期末(決算時)
期末における商品の時価が取得原価(帳簿価額)より低い場合は、この価値の減少額(取得原価と時価との差額)を商品評価損勘定(費用)の借方に記帳して費用計上するとともに、繰越商品勘定(資産)の貸方に記帳してこれから控除する(減少させる)。
商品評価損の計算方法
商品評価損は、次の計算式・公式で算定・算出する。
商品評価損 =(商品1個あたりの原価 - 商品1個あたりの時価)✕ 実地棚卸数量
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)
期末商品の評価(決算整理仕訳)
期末の在庫商品の時価が帳簿価額を下回ったため、決算整理仕訳で修正した。
商品評価損 | ✕✕✕✕ | 繰越商品 | ✕✕✕✕ |
低価法に関する税務・税法・税制上の取り扱い
法人税法上の取り扱い
次のページを参照。
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