商品評価損
商品評価損とは
商品評価損の定義・意味など
商品評価損(しょうひんひょうかそん)とは、期末において低価法を適用する場合に生じる商品の取得原価(帳簿価額)と時価との差額を処理する費用勘定をいう。
商品評価損の目的・役割・意義・機能・作用など
棚卸資産の評価基準
低価法の強制適用
商品は、原則として取得原価(帳簿価額)で評価する(原価法)。
ただし、損傷・変色などの物理的原因による価値の減少(品質・機能の低下)や経済的原因による価値の減少(新商品の登場等)などにより、期末商品の時価がその取得原価(帳簿価額)よりも下がる場合が出てくる。
この場合、従来は、期末商品の時価が帳簿価額よりも低い場合に限り、時価で評価し直すこと(低価法)が認められていた。
しかし、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、棚卸資産の評価基準にしたがい、時価で期末商品の価値を再評価する低価法が強制適用されるようになった。
なお、税法上は、低価法の適用は従来どおり任意であり、強制されていない。
棚卸資産の評価に関する会計基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準
7. 通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。
商品評価損勘定はこの取得原価と時価との差額を当期の費用として処理するための勘定科目である。
商品評価損の位置づけ・体系(上位概念等)
期末商品の評価
前述したように、商品については、棚卸資産の評価基準にしたがい、期末に商品の価値の再評価を行う。
この価値の再評価は、決算時に行われる期末商品の評価という決算整理事項のひとつである。
なお、期末商品の評価には、次の2つの内容がある。
商品評価損の歴史・沿革・由来・起源・経緯など
企業会計原則の貸借対照表原則五Aと注解10
従来、棚卸資産の評価損の会計上の取り扱いについては、企業会計原則の貸借対照表原則五Aと注解10の規定にしたがうものとされていた。
すなわち、期末商品の評価(商品の価値の再評価)に関しては、原則は原価法によるものとしながら、商品の時価が帳簿価額よりも低い場合に限り、時価で評価し直すこと(低価法)が認められていた。
つまり、会計上は、棚卸資産の評価基準として、原価法と低価法の2つが認められていたわけである。
ただし、原価法を採用している場合であっても、時価が取得原価より著しく下落し、回復する見込がない場合は、強制評価減が適用されていた。
企業会計原則
(資産の貸借対照表価額)
五 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。
…
A 商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等のたな卸資産については、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算し、これに個別法、先入先 出法、後入先出法、平均原価法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。
企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
しかし、国際会計基準では、棚卸資産の評価基準としては、低価法が原則とされている。
そこで、2009年(平成21年)3月より、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、低価法が強制適用されることとなった。
商品評価損の決算等における位置づけ等
財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 売上原価 > 商品評価損
表示方法
売上原価の内訳科目
「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、時価が取得原価を下回った場合の商品評価損は、損益計算書上、原則として、すべて売上原価の内訳科目として表示することとなった。
ただし、臨時的で、かつ、多額であるときは特別損失に属するものとして表示する。
棚卸資産の評価に関する会計基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産の収益性の低下に係る損益の表示
17. 通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額(前期に計上した簿価切下額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は売上原価とするが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する。また、収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。…
また、財務諸表等規則では、原価性を有しないと認められるものについては、営業外費用、または特別損失に属するものとして表示するとされている。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(原価差額の表示方法)
第九十六条 財務諸表提出会社の採用する原価計算方法に基づいて計上される原価差額は、一般に公正妥当と認められる原価計算の基準に従つて処理された結果に基づいて、売上原価又はたな卸資産の期末たな卸高に含めて記載しなければならない。ただし、原価性を有しないと認められるものについては、営業外収益若しくは営業外費用として、又は特別利益若しくは特別損失として記載するものとする。
従来は、企業会計原則により、時価が取得原価を下回った場合の商品評価損は、原則として、売上原価の内訳科目または営業外費用に属するものとして表示するものとされていた。
ただし、時価の下落が著しい場合等は、営業外費用または特別損失に属するものとして表示する。
企業会計原則注解
〔注10〕たな卸資産の評価損について
(1) 商品、製品、原材料等のたな卸資産に低価基準を適用する場合に生ずる評価損は、原則として、売上原価の内訳科目又は営業外費用として表示しなければならない。
(2) 時価が取得原価より著しく下落した場合(貸借対照表原則五のAの1項ただし書の場合)の評価損は、原則として、営業外費用又は特別損失として表示しなければならない。
(3) 品質低下、陳腐化等の原因によって生ずる評価損については、それが原価性を有しないものと認められる場合には、これを営業外費用又は特別損失として表示し、これらの評価損が原価性を有するものと認められる場合には、製造原価、売上原価の内訳科目又は販売費として表示しなければならない。
商品評価損の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
期末(決算時)
期末における商品の時価が取得原価(帳簿価額)より低い場合は、この価値の減少額(取得原価と時価との差額)を商品評価損勘定(費用)の借方に記帳して費用計上するとともに、繰越商品勘定(資産)の貸方に記帳してこれから控除する(減少させる)。
商品評価損の計算方法
商品評価損は、次の計算式・公式で算定・算出する。
商品評価損 =(商品1個あたりの原価 - 商品1個あたりの時価)✕ 実地棚卸数量
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)
期末商品の評価(決算整理仕訳)
期末の在庫商品の時価が帳簿価額を下回ったため、決算整理仕訳で修正した。
商品評価損 | ✕✕✕✕ | 繰越商品 | ✕✕✕✕ |
商品評価損の税務・税法・税制上の取り扱い
必要経費算入(所得税法)・損金算入(法人税法)の可否
ただし、次に掲げる事実に該当する場合は、必要経費または損金に算入できる。
- 災害により著しく損傷したこと
- 著しく陳腐化したこと
- 上記に準ずる特別の事実
法人税法
(資産の評価損の損金不算入等)
第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
法人税法施行令
(資産の評価損の計上ができる事実)
第六十八条 法第三十三条第二項 (特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であつて、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。
一 棚卸資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。
ハ イ又はロに準ずる特別の事実
…
著しく陳腐化したこと
「著しく陳腐化したこと」とは、たとえば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。
- いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること
- 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと
法人税基本通達
(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)
9-1-4 令第68条第1項第1号ロに規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。
(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。
(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。
準ずる特別の事実
災害による著しい損傷または著しい陳腐化に準ずる特別の事実とは、たとえば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。
法人税基本通達
(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)
9-1-5 令第68条第1項第1号ハに規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
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