受取賃貸料
受取賃貸料とは
受取賃貸料の定義・意味など
受取賃貸料(うけとりちんたいりょう)とは、土地・建物や機械などの資産を外部に貸し付けている場合(その貸付けが通常の営業活動である場合を除く)に受け取る賃貸料を営業外収益として処理するための収益勘定をいう。
他の勘定科目との関係
受取地代・受取家賃
土地の賃貸料は受取地代、建物の賃貸料は受取家賃などの専用の勘定科目を使用し区別して処理することもある。
売上高
土地などの資産の貸付けが通常の営業活動である場合は、受取賃貸料ではなく、営業収益に属する売上高として処理をする。
受取賃貸料の決算書における位置づけ等
受取賃貸料の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業外損益の部 > 営業外収益 > 受取賃貸料
受取賃貸料の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
収益の認識基準(計上時期・期間帰属)
実現主義または現金主義
収益については会計上は原則として実現主義(発生主義をさらに厳格化したもの)が適用される。
企業会計原則
第二 損益計算書原則
(損益計算書の本質)
一 …
A すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
ただし、例外的に受取日にすべて収益に計上すること、つまり、現金主義も認められている(詳細については後述)。
これに対して、税務上は受け取った家賃・地代の計上時期は、原則として、契約で家賃・地代の支払日が定められている場合にはその支払日、定められていない場合には支払いを受けた日、請求時に支払う契約の場合にはその請求日とされていて、いわば現金主義が採用されている。
所得税基本通達
(不動産所得の総収入金額の収入すべき時期)
36-5 不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、別段の定めのある場合を除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)
…
たとえば、1月分家賃・地代を前月の12月末までに支払うという契約になっていた場合、税務上は1月分としてもらう家賃・地代は12月に収益として計上しなければならない。
これに対して、会計上は1月分家賃・地代は1月に実現するものなので、12月末時点では前受地代家賃(前受収益)(負債)となり、その時点では収益とはならない。
参考:不動産所得の計上時期| http://ooyazeirishi.com/blog/確定申告/816/
ただし、継続的に前受収益・未収収益の認識をしている場合には、税務上、例外的に貸付期間の経過に応じ対応する賃借料を収益に計上することができるものとされ、実現主義によることが認められている。
直所 2-78
昭和48年11月6日
国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿
国税庁長官
不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について
所得税法第26条第1項《不動産所得》に規定する不動産等の賃貸料の収入金額の計上時期に関する取扱いを下記のとおり定めたから、これによられたい。
(理由)
不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、原則として契約上の支払日の属する年分の総収入金額に算入することとしているが、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなどの一定の要件に該当する場合には、その年の貸付期間に対応する賃貸料の額をその年分の総収入金額に算入することを認めることとしたものである。
記
…
参考:不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について|申告所得税関係 個別通達目次|国税庁 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/731106/01.htm
つまり、会計と税務とでは原則と例外が逆になっているだけで、結論的には、継続適用を前提に(→継続性の原則)実現主義でも現金主義でもよいということになる。
期末(決算時)等
決算整理事項(決算整理仕訳)
受取賃貸料については、実現主義(発生主義をさらに厳格化したもの)にもとづき、原則として、期末に決算整理事項のひとつとして収益の繰延または収益の見越を行う。
当期に収益として受け取った金額のなかに、次期以降の期間に対する収益が含まれている場合、その次期以降の期間に対する収益を当期の収益から控除し、次期以降に繰り延べる会計処理(収益の繰延)を行う。
具体的には、次期以降の期間に対する収益の金額を、地代家賃勘定などの借方に記帳して当期の損益計算から除去するとともに、前受地代家賃(または前受収益)勘定(負債)の貸方に記帳して貸借対照表の負債の部に計上する。
企業会計原則
〔注5〕経過勘定項目について
(2) 前受収益
前受収益は、…時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。
当期の収益として計上すべきであるが、次期以降にその受取りを行うため、当期の収益として計上されない場合に、次期以降に受け取ることを見越して当期の収益に計上する会計処理(収益の見越)を行う。
具体的には、当期の収益に計上すべき金額を地代家賃勘定の貸方に記帳して当期の損益計算に計上するとともに、未収地代家賃(または未収収益)勘定(資産)の借方に記帳して貸借対照表の資産の部に計上する。
企業会計原則
(4) 未収収益
…、このような役務に対する対価は時間の経過に伴い既に当期の収益として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。
翌期首
再振替仕訳
翌期首には、負債として繰り延べられた金額を収益に戻す、または資産として見越された金額を収益から控除する会計処理(再振替仕訳)を行う。
具体的には、収益の繰延を行っている場合は地代家賃勘定の貸方に記帳するとともに前受地代家賃(または前受収益)勘定(負債)の借方に記帳し、収益の見越を行っている場合は地代家賃勘定の借方に記帳するとともに未収地代家賃(または未収収益)勘定(資産)の貸方に記帳する。
例外
重要性の原則
重要性の原則から、重要性の乏しいものについては、継続適用を前提にして、負債または資産に計上しなくてもよいとされている(つまり、受取日にすべて収益に計上するだけですみ、期末にわざわざ前受収益勘定(負債)または未収収益勘定(資産)に振り替える必要はない)。
企業会計原則
重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
…
(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。
取引の具体例と仕訳の仕方
自社ビル内の一室を貸し付けているが、テナント料が当座預金に振り込まれた。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | ×××× | 受取賃貸料 | ×××× |
受取賃貸料の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引または非課税取引
消費税法上、受取賃貸料は課税取引として課税売上げに該当する。
ただし、受取地代や住宅の受取家賃(貸付期間が1カ月に満たない場合などを除く)は非課税取引にあたり、消費税は課税されない。
No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など|消費税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6225.htm
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