有価証券―会計処理
有価証券の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
有価証券は、通常、次の4つの種類に分類される。
取引の記録では、この分類上の名称をそのまま勘定科目として用いてもよい。
たとえば、日商簿記3級では有価証券はすべて売買目的で取得したものとして売買目的有価証券勘定が使用されるが、一般の会社ではその他有価証券勘定が使用されることが多い。
なお、証券会社などでは売買目的有価証券勘定が使用されることが多い。
また、売買目的有価証券と1年内に満期の到来する有価証券については有価証券勘定(流動資産)を使用し、これ以外の有価証券については投資有価証券勘定(固定資産)を使用する場合もある。
岩崎恵利子 『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』 シーアンドアール研究所、2009年、59項。
ただし、貸借対照表上は、会社計算規則では関係会社の株式(子会社株式・関連会社株式)については関係会社株式という表示科目で別に表示し、財務諸表等規則では関係会社株式と関係会社社債等について別に表示するものとされている。
また、親会社株式についても親会社株式という表示科目で別に表示するものとされている。
つまり、貸借対照表の表示科目としての投資有価証券には関係会社株式と関係会社社債等、親会社株式は含まれないということになる。
そのため、子会社株式・関連会社株式・親会社株式については、投資有価証券勘定とは区別して、関係会社株式勘定(または子会社株式・関連会社株式勘定)や親会社株式勘定などで処理をすることも考えられる※。
※参考:袴田 正美,袴田 幸江 『経理 勘定科目のことがよくわかる事典』 西東社、2007年、106ー107項。
会社計算規則
(関係会社株式等の表示)
第八十二条 関係会社の株式又は出資金は、関係会社株式又は関係会社出資金の項目をもって別に表示しなければならない。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(投資その他の資産の区分表示)
第三十二条 投資その他の資産に属する資産は、次に掲げる項目の区分に従い、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
一 投資有価証券。ただし、関係会社株式、関係会社社債及びその他の関係会社有価証券(関係会社有価証券のうち、関係会社株式及び関係会社社債以外のものをいう。以下この項において同じ。)を除く。
…
第三十二条の二 親会社株式のうち第十八条に規定するもの以外のものは、投資その他の資産に親会社株式の科目をもつて別に掲記しなければならない。ただし、その金額が僅少である場合には、注記によることができる。
購入・取得時
有価証券を購入したときは、その取得原価(=購入時の時価)を有価証券(または売買目的有価証券)勘定などの借方に記帳して資産計上する。
有価証券は証券会社を経由して購入するため、購入時には証券会社に支払手数料(買入手数料)を支払うことになる。
有価証券の取得原価には、有価証券の購入代金のほか、こうした支払手数料など購入に要したすべての付随費用を計上する。
取得原価(取得価額)= 購入代金 + 付随費用(支払手数料など)
なお、期末に保有している有価証券を時価評価する場合、その時価には取得または売却に要する付随費用は含めない。
なお、購入代金は次の計算式により算定・算出する。
(株式の場合)
(債券の場合)
売買目的で有価証券を購入し、売買の委託手数料も含めて普通預金から支払った。
売買目的有価証券(または有価証券) | ✕✕✕✕ | 普通預金 | ✕✕✕✕ |
売却時
したがって、有価証券の取得時の時価(取得原価)と売却時の時価は異なる。
そこで、たとえば、売買目的有価証券を売却した場合は、帳簿価額(取得原価)を有価証券(または売買目的有価証券)勘定の貸方に記帳して減少させるとともに、帳簿価額と売却価額との差額に売買の委託手数料を加えた売却損益を、有価証券売却益(または売買目的有価証券売却益)勘定(収益)または有価証券売却損(または売買目的有価証券売却損)勘定(費用)で処理をする。
売買目的で購入した有価証券(帳簿価額100万円)を98万円で売却し、売買の委託手数料1万円が差し引かれた97万円が普通預金に入金された。
普通預金 | 970,000 | 有価証券(または売買目的有価証券) | 1,000,000 |
有価証券売却損(または売買目的有価証券売却損) | 30,000 |
なお、この場合、同一銘柄の株式の一部を売却するときなどには、売却部分に対する原価計算が必要となるが、この払出価額の計算方法は、総平均法または移動平均法による。
株式の配当や公社債の利息の受取時
株式の配当や公社債の利息を受け取る場合には、所得税や住民税が源泉徴収される。
そして、この徴収額は法人税や住民税の確定申告の際、税額から控除することができるので、受取配当金や受取利息と相殺せず、仮払税金勘定などを使用し、別途管理しておいたほうが便利である。
決算時の処理
有価証券の評価替え
有価証券は資産として、決算時において貸借対照表でどう評価すべきか、という資産の評価基準の問題が発生する。
この点、有価証券の評価基準については、「金融商品に関する会計基準」において定められている。
一般的に貸借対照表に記載される資産価格については、取得原価主義により、時価ではなく、取得原価に基づいて評価するのが原則である。
しかし、有価証券については、その保有目的により評価基準が異なるが、原則として時価主義が採用されている。
また、取得原価で評価する有価証券であっても、時価あるいは実質価額が著しく下落し回復の見込みがない場合は、時価で評価する。
- 売買目的有価証券…時価により評価する。
- 満期保有目的債券…原則として取得原価、例外的に償却原価で評価する。
- 子会社株式・関連会社株式…取得原価で評価する。
- その他有価証券…市場価格がある場合は時価により評価する。
時価 | 損益:営業外損益 | ||
(原則)取得原価 | |||
(例外)償却原価 | 償却原価法による差額:営業外損益 | ||
取得原価 | |||
時価 | 純資産の部(税効果考慮後の額) | ||
(原則)取得原価 | |||
(例外)償却原価 | 償却原価法による差額:営業外損益 |
売買目的有価証券・その他有価証券
時価で評価する有価証券は、売買目的有価証券と市場価格があるその他有価証券の2つである。
そのうち、評価差額が当期の損益に影響するのは、売買目的有価証券だけである。
すなわち、売買目的有価証券の場合、これを購入したときはその取得原価で評価される(取得原価主義)ため、決算時には売買目的有価証券評価益または売買目的有価証券評価損勘定を用いて、時価により評価し直す(評価替え)。
なお、時価-取得原価が利益であるが、これにより「投資→リターン」のサイクルにおける利益(リターン-投資)が分かる。
満期保有目的債券合
満期保有目的債券は相場変動リスクを考慮する必要が少ないため、時価評価の対象から外され、償却原価法により、貸借対照表額を算定することになる。
子会社株式・関連会社株式(関係会社株式)
子会社株式・関連会社株式(関係会社株式)については、その会社を支配したり、影響力を行使したりすることが目的として保有されるため、時価評価は不要で、取得価額をもって評価される。
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