満期保有目的債券の評価替え
満期保有目的債券の評価替え
満期保有目的債券の評価替えの位置づけ・体系(上位概念等)
決算整理事項
満期保有目的債券の評価替えは決算整理事項のひとつである。
なお、決算整理事項には次のようなものがある。
- 収入金額の整理
- 必要経費の整理
- 売上原価の算定
- 経過勘定項目関係
- 期末商品の評価
- 消耗品の整理
- 引当金の設定
- 減価償却費の計上
- 営業権の償却
- 繰延資産の償却
- 有価証券の評価替え
- 売買目的有価証券の評価替え
- 満期保有目的債券の評価替え
- 社債関係
- 現金過不足の整理
- 当座預金の修正
- 引出金の整理
- 税金関係
償却原価法
満期保有目的債券の評価替えは償却原価法により行う。
なお、「金融商品に係る会計基準」では、満期保有目的債券も含めて、次のような金融資産・金融負債が償却原価法の適用対象とされている。
(金融資産)
企業会計基準第10号 金融商品に係る会計基準
1.債 権
14. 受取手形、売掛金、貸付金その他の債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とする。ただし、債権を債権金額より低い価 額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整 と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額としなければならない。
…
2.有価証券
(2)満期保有目的の債券
16. 満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い 価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない 。
企業会計基準第10号 金融商品に係る会計基準
5.金銭債務
26. 支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。 ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならない。
満期保有目的債券の評価替えの会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
償却原価法
利息法・定額法
満期保有目的債券は資産として、決算時において貸借対照表でどのように評価すべきか、という資産の評価基準の問題が発生する。
この点、満期保有目的債券は満期に額面金額で返済を受けるために時価の影響がなく、売買目的有価証券のように毎決算時に時価で評価しなおす必要はない(→売買目的有価証券の評価替え)。
そのため、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)では、満期保有目的債券は、原則どおり、取得原価主義を適用するものとしている。
ただし、満期保有目的債券を債券金額(額面金額)より低い価額または高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、決算時に償却原価法にもとづいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
企業会計基準第10号 金融商品に関する会計基準
2.有価証券
…
(2) 満期保有目的の債券
16. 満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
この償却原価法には、次の2つの計算方法がある。
つまり、毎決算時に利息法または定額法で算定された価額を貸借対照表上の満期保有目的債券勘定に直接加減して債券金額と取得価額との差額を調整する。
また、この調整額は有価証券利息勘定で費用処理し、損益計算書上に計上される。
参考:企業会計基準委員会「金融商品に係る会計基準」(企業会計基準第10号)の注5
使用する勘定科目・記帳の仕方等
満期保有目的債券・有価証券利息
決算にあたり、満期保有目的債券の債券金額と取得価額との差額を償却原価法により処理する場合の具体的な会計処理は以下のとおりである。
債権金額が取得価額より高い場合には、その差額を満期保有目的債券勘定(資産)の借方に記帳して増加させるとともに、有価証券利息勘定の貸方に記帳して収益計上する。
債権金額が取得価額より低い場合には、その差額を満期保有目的債券勘定(資産)の貸方に記帳して減少させるとともに、有価証券利息勘定の借方に記帳して費用計上する。
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)
定額法
満期保有目的債券(債券金額100万円)を98万円で取得した。取得時から満期までの期間は1年、決算までの期間は3カ月であった。
満期保有目的債券 | 5千 | 有価証券利息 | 5千 |
満期保有目的債券(債券金額100万円)を102万円で取得した。取得時から満期までの期間は1年、決算までの期間は3カ月であった。
有価証券利息 | 5千 | 満期保有目的債券 | 5千 |
現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 2 ページ]
現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ