更新料
更新料の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期中
資産計上
(通常の更新料)
税法上、更新料は「資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用」として、繰延資産とされている(所得税法施行令7条・法人税法施行令第14条)。
所得税法施行令
(繰延資産の範囲)
第七条 法第二条第一項第二十号 (繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
…
三 前二号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
…
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
…
法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条 法第二条第二十四号 (繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
…
六 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
…
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
…
しかし、会計上、すなわち、実務対応報告書第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」※では、創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費等(新株予約権発行費を含む)の5つが繰延資産として列挙されているが、そのなかに更新料は含まれていない。
※会社法で繰延資産の限定列挙が廃止され、繰延資産の範囲は会計慣行に委ねられることとなった。
つまり、更新料は税法独自の繰延資産であるので、会計上の処理としては、長期前払費用として計上し、貸借対照表の区分表示としては「投資その他の資産」に表示することになる。
中小企業の会計に関する指針
費用として処理しなかった税法固有の繰延資産は、長期前払費用等として計上する。
企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
…
前払費用については、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に費用となるものは、流動資産に属するものとし、一年をこえる期間を経て費用となるものは、投資その他の資産に属するものとする。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(投資その他の資産の区分表示)
第三十二条 投資その他の資産に属する資産は、次に掲げる項目の区分に従い、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
…
十一 長期前払費用
…
(借地権の更新料)
税法上、借地権更新に際して支払った更新料は借地権の帳簿価額に加算することとされている。
また、借地権は税法上、土地と同様のものとして扱われており非減価償却資産であるが、その代わりに借地権の一部が減価したとみなし、以下の算式により計算した金額を費用計上(必要経費・損金算入)できる扱いとなっている。
そこで、この金額を借地権償却勘定の借方に記帳して費用計上する。
必要経費・損金算入額 = 更新直前の借地権の帳簿価額 ✕ (更新料の額 / 更新時の借地権の価額(時価))
所得税法施行令
(借地権等の更新料を支払つた場合の必要経費算入)
第百八十二条 居住者が、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供する借地権(地上権若しくは土地の賃借権又はこれらの権利に係る土地の転借に係る権利をいう。)又は地役権の存続期間の更新をする場合において、その更新の対価(以下この条において「更新料」という。)の支払をしたときは、当該借地権又は地役権の取得費に、その更新の時における当該借地権又は地役権の価額のうちに当該更新料の額の占める割合を乗じて計算した金額に相当する金額は、その更新のあつた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
法人税法施行令
(更新料を支払つた場合の借地権等の帳簿価額の一部の損金算入等)
第百三十九条 内国法人が、その有する借地権(地上権若しくは土地の賃借権又はこれらの権利に係る土地の転借に係る権利をいう。)又は地役権の存続期間の更新をする場合において、その更新の対価(以下この条において「更新料」という。)の支払をしたときは、その更新の直前における当該借地権又は地役権の帳簿価額に、その更新の時における当該借地権又は地役権の価額のうちに当該更新料の額の占める割合を乗じて計算した金額に相当する金額は、その更新のあつた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、その更新料の額は、当該借地権又は地役権の帳簿価額に加算するものとする。
期末(決算時)
更新料の償却(繰延資産の償却)
繰延資産で計上するにせよ、長期前払費用で計上するにせよ、更新料は償却(繰延資産の償却)することができる。
すなわち、通常は5年で償却し、契約期間が5年未満で更新時に更新料を支払う場合はその賃貸契約期間で償却する。
No.5460 建物を賃借するための権利金等|法人税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5460.htm
ただし、支出する金額が20万円未満の少額なものについては、その全額を支出時に支払手数料勘定などを使用して費用計上することが認められている(→少額繰延資産)(法人税法施行令第134条)。
取引の具体例と仕訳の仕方
更新料を支払った場合は、長期前払費用として処理し、その後、決算日ごとに償却していくことになる。
期中
通常の更新料の場合
事務所の更新料を支払った。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
長期前払費用 |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
借地権の更新料の場合
借地権を更新した。なお、更新料が200万円、更新直前の借地権の帳簿価額は300万円、更新時の借地権の時価は500万円であった。
借地権 | 2,000,000 | 普通預金 | 2,000,000 |
借地権償却 | 1,200,000 | 借地権 | 1,200,000 |
※借地権償却分 = 300万 ✕(200万/500万)
更新料の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、更新料は不課税取引として消費税の課税対象外である。
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