給与手当(給料手当・給料・給与)―範囲・具体例―現物給与
現物給与とは
現物給与の定義・意味など
現物給与(げんぶつきゅうよ)とは、給与の一部として、金銭以外で現物支給される物・権利・その他の経済的利益をいう(所得税法36条)。
現物給与の位置づけ・体系(上位概念等)
給与所得の収入金額
ただし、現物給与も原則として給与所得の収入金額として取り扱われる。
所得税法
(収入金額)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
現物給与の範囲・具体例
現物給与に含まれるもの(該当するもの)
現物給与にはさまざまなものがある。
具体例としては、次のようなものがある。
- 会社の商品
- 商品・製品等の値引販売
- 商品券
- 背広
- 食事
- 福利厚生
- 個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益
- いわゆる逆養老の保険料の半額(会計上は役員報酬または給料手当等として処理される)
レジャークラブ年会費(スポーツクラブ年会費など)
税法上、レジャークラブ入会金が法人の資産として計上されずに給与等とされている場合は、レジャークラブ年会費は当該役員または従業員に対する給与とされる。
所得税基本通達
(使用者が負担するレジャ-クラブの入会金等)
36-34の3 使用者がレジャ-クラブ(宿泊施設、体育施設その他のレジャ-施設を会員に利用させることを目的とするクラブでゴルフクラブ以外のものをいう。)の入会金、年会費その他の費用を負担することにより当該使用者の役員又は使用人が受ける経済的利益については、次による。
…(2) 使用者が年会費その他の費用(レジャ-クラブの利用に応じて支払われる費用を除く。)を負担する場合には、36-34の2の(1)の例による。
(使用者が負担するゴルフクラブの年会費等)
36-34の2 使用者がゴルフクラブの年会費その他の費用を負担することにより当該使用者の役員又は使用人が受ける経済的利益については、次による。
(1) 使用者がゴルフクラブの年会費、年決めロッカ-料その他の費用(その名義人を変更するために支出する名義書換料を含み、プレ-をする場合に直接要する費用を除く。)を負担する場合には、その入会金が法人の資産として計上されているときは、当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとし、その入会金が36-34により給与等とされているときは、その負担する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。
…
カタログギフト
何かの記念に社員にカタログギフトを送った場合は、給与として扱うのが原則である。
ただし、数種類の中から選択できる程度のものであれば、福利厚生費として計上できる。
現物給与に含まれないもの(該当しないもの)
現物給与のなかには、所得税法上(所得税法・所得税法施行令)または課税実務上(所得税基本通達等)、非課税所得として課税対象とされていないものも多くある。
この場合、会計上は現物給与には含まれないものとして給与手当ではなく、福利厚生費勘定などで処理する。
たとえば、所得税基本通達36-21以下36-30までに、次のような課税対象とはならない現物給付の具体例があげられている。
税務上、たとえば、永年勤続者の記念品等は社会通念上相当と認められ、かつ、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであることなどの所定の条件を満たせば、給与手当勘定ではなく福利厚生費勘定で処理することが認められている。
また、創業記念品等も1万円以下のものであり、かつ、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであることなどの所定の条件を満たせば、福利厚生費勘定で処理する。
なお、所定の条件を満たさない記念品は福利厚生費とはならず、給与として源泉徴収の対象となる。
所得税基本通達
(課税しない経済的利益……永年勤続者の記念品等)
36-21 使用者が永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)を支給することにより当該役員又は使用人が受ける利益で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えない。
(1) 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。
(2) 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。
(課税しない経済的利益……創業記念品等)
36-22 使用者が役員又は使用人に対し創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際し、その記念として支給する記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えない。ただし、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際し支給するものについては、この限りでない。
(1) その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のものであること。
(2) 創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであること。
現物給与の所得税法上の取り扱い
課税対象
現物給与の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
給料手当または福利厚生費
現物給与は、課税対象となる場合は給料手当勘定で、課税対象とはならない場合は福利厚生費勘定等の借方に記帳して費用計上する。
取引の具体例と仕訳の仕方
会社創立記念日に、従業員に一律に記念品を贈与し、その費用100,000円はすべて現金で支払った。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
福利厚生費 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
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