給与手当(給料手当・給料・給与)―範囲・具体例―手当―通勤手当
通勤手当とは
通勤手当の定義・意味など
通勤手当(つうきんてあて)とは、通勤に要する費用を支弁するために支給される手当をいう。
厚生労働省『第2回 社会保険料・労働保険料の賦課対象となる報酬等の範囲に関する検討会 平成24年9月20日
なお、所得税法上は、給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける
手当と定義されている(所得税法9条5号)。
通勤手当の位置づけ・体系(上位概念等)
給料(給与・賃金・報酬)
通勤手当を含む各種手当も、「労働の対償」(労働基準法11条)として支払われるものとして、労働基準法上の賃金として位置づけられている。
ただし、最低賃金法上は、各種手当ては最低賃金の対象となる賃金から除外される。
なお、手当には通勤手当も含め次のような種類がある。
- 時間外手当(残業手当)
- 深夜勤務手当
- 休日出勤手当
- 年次有給休暇手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 家族手当(扶養手当)
- 結婚手当
- 地域手当
- 単身赴任手当
- 役職手当
- 営業手当
- 職務手当(危険手当など)
- 資格手当
- 皆勤手当(精勤手当)
- 勤続手当
通勤手当の法的根拠・法律など
就業規則
法律上は、使用者は通勤に要する費用の負担を強制されていない(通勤手当の支払いを義務づけた法律はない)。
通勤手当を支払う場合は、これも賃金として、常時10人以上の労働者を使用しているときには、就業規則で定める必要がある。
通勤手当の範囲・具体例
新幹線・グリーン料金
新幹線は通勤手当に含まれるが、グリーン料金は通勤手当に含まれない。
所得税基本通達
(新幹線通勤の場合の非課税とされる通勤手当)
9-6の3 令第20条の2に規定する「その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額」には、新幹線鉄道を利用した場合の運賃等の額も含まれるものとする。
(注) 「最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額」の中には、令第167条の3第1 項第1号に規定する「特別車両料金等」は含まれないことに留意する。
通勤手当と関係する概念
旅費
旅費は通常使用者が負担すべきものとして現物または実費弁償で支給されることから、通勤手当のように「労働の対償」としての「賃金」には該当しない。
通勤手当の税務・税法・税制上の取り扱い
非課税所得
所得税法
(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
…
五 給与所得を有する者で通勤するもの(以下この号において「通勤者」という。)がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの
ただし、1カ月あたりの非課税限度額があり、この限度額を超えて通勤手当を支給する場合、その超える部分の金額については給与として課税される。
非課税限度額
非課税限度額は以下のとおりである。
電車・バス等の交通機関を利用している場合
この場合の非課税限度額は、月額最高10万円までとした、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券・通勤定期代などの金額となる。
前述したとおり、新幹線は含まれるが、グリーン料金は含まれない。
自転車・バイク・自動車等の交通用具を使用している(マイカー通勤者等)場合
この場合の1カ月あたりの非課税限度額は片道の距離により次のとおり区分されている。
距離による区分 | 1カ月あたりの非課税限度額 |
---|---|
片道2キロメートル未満 | 全額課税 |
片道2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4100円 |
片道10キロメートル以上15キロメートル未満 | 6500円 |
片道15キロメートル以上25キロメートル未満 | 11300円 |
片道25キロメートル以上35キロメートル未満 | 16100円 |
片道35キロメートル以上45キロメートル未満 | 20900円 |
片道45キロメートル以上 | 24500円 |
通勤手当の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法・簿記の記帳の仕方・使用する勘定科目等
使用する勘定科目・記帳の仕方等
旅費交通費(旅費・交通費)・通勤手当(通勤費)
通勤手当は給与手当に含まれる。
しかし、前述したように、所得税法上、通勤手当は1カ月あたり10万円を限度として非課税所得とされているので(所得税法9条)、旅費交通費勘定で処理するのが一般的である。
参考:岩崎恵利子 『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』 シーアンドアール研究所、2009年、139項。
旅費交通費は遠隔地に出張した場合に旅費規程等に基づき支給される出張旅費である旅費と、近距離の交通費(交通機関の利用料等)とからなる。
ただし、通勤手当には非課税限度額があり、10万円を越える場合には、越えた部分の金額は給与等として所得税が課税されるので、この点で、通勤手当は通常の旅費交通費とは異なる性格を有している。
また、両者はいずれも、会計上(損益計算書上)は、販売費及び一般管理費に位置づけられるが、通勤手当は給与(人件費という固定費)としての性格が強くある。
そこで、通勤手当を通常の旅費交通費と区別して管理するため、別途、通勤手当(または通勤費・通勤交通費)勘定などを設ける場合もある。
源泉徴収
上記の非課税限度額を超えて通勤手当を支給する場合、この超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与の額に上乗せして所得税の源泉徴収を行う必要がある。
取引の具体例と仕訳の仕方
従業員に1カ月分の定期代を現金で支払った
旅費交通費 | ×××× | 現金 | ×××× |
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